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東北大学 工学研究科・工学部 機械知能・航空工学科
流体エネルギー工学分野(茂田・杉本研究室)

プラズマ流体工学 など

Research works

プラズマ流体工学は、流体力学・熱力学・伝熱学・電磁気学・プラズマ物理学・化学工学,核生成理論・凝縮理論・ブラウン凝集を内包するエアロゾル動力学などによって成り立っている分野横断型工学の典型です。そのため、機械工学(特に流体工学・熱工学)分野の研究者やエンジニアを志す学生さんにとって、将来の活躍につながる幅広い知識と深い洞察力を身に付けることができます。

また、常に “ものづくり” や “環境改善・安全化” といった社会への貢献を意識しながら、流体の科学を楽しめることも特徴のひとつです。

新材料の創製や加工、有害な難分解性物質の無害化処理など、1万度を超えるプラズマを利用した高エネルギー流体プロセスの研究に取り組んでいます。エネルギーの観点からは、まず電磁気的エネルギーを流体の熱エネルギーと運動エネルギーに変換し、それらをさらに化学反応・材料形成といった物質の変化(物質がもっているエネルギーの変化)につなげるという、多段階のエネルギー変換・制御プロセスとみなすこともできます。様々な物理現象が重なり合うことで成り立っているマルチフィジックスシステムであり、複雑なうえに熱かったり眩しかったりするので、従来の手法では調べることができません。そこで【新たな手法】をつくって不可視の現象を「視る・観る・診る (情報を視覚化 & データを解析する)」ことによって解明し、得られた知見をもとに問題解決したり、新しい熱流体プロセスを創成することを目指しています。



これまで内閣府や経済産業省主導の国家プロジェクトに参画したり、国内外の研究機関や民間企業と連携して研究を進めてきた実績もあります。

【共同研究先(現在進行形も含む)】(※民間企業は論文や学会発表によって公表されている会社のみ記載)
・大阪大学 ・東京大学 ・九州大学 ・金沢大学 ・埼玉大学 ・筑波大学 ・名城大学 ・熊本大学 ・足利大学 ・大阪工業大学
・産業技術総合研究所 ・宮城県産業技術総合センター
・ボローニャ大学(イタリア) ・マサチューセッツ大学ローウェル校(アメリカ) ・カイザー大学(アメリカ)
・モンクット王工科大学トンブリー校(タイ)
・オーストラリア連邦科学産業研究機構(オーストラリア)
・(株)神戸製鋼所 ・JFEスチール(株) ・JFEテクノリサーチ(株) ・日本製鉄(株) ・日立造船(株) ・大陽日酸(株) ・マツダ(株)
・Thai Kobelco Welding Co., Ltd.


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高エンタルピープラズマ-非電離気体共存系の複雑流動シミュレーション手法の構築



熱プラズマなどの高エンタルピープラズマと非電離気体の共存系の流動をシミュレーションするためには、室温~1万度超という大きな温度の時空間変化を同じ計算領域内で取り扱わなければなりません。同時に温度変化に伴う物性値や密度の変化も考慮に入れる必要があります。一方でマッハ数は小さく、渦の動的挙動をシミュレートするためには、圧縮性流れ用のシミュレーション手法では非常に長い計算時間を要してしまいますので、非圧縮性流れ用のシミュレーション手法を用いることが現実的となります。しかしこれは数値計算において“とても過酷な条件”で、計算は容易に破綻してしまいます。そのため、これまでのシミュレーションでは解を得るために計算を安定に行うことのできる手法が用いられてきました。ところがそのような「従来の手法」は計算を安定化すると同時に物理的な不安定性も抑制してしまうため、得られる結果は渦運動が再現されないものとなってしまいます。一方で、渦運動を伴う現実的な流体運動を再現するためには(過酷な計算条件において解を得るには大きな労を要しますが)やはり渦運動の捕捉に適したスキームとアルゴリズムを組み合わせた新手法を考案する必要がありました。研究の結果、物理的な不安定性(渦運動)の捕捉と数値的に安定な長時間計算を両立できるシミュレーション手法の構築に世界で初めて成功しました。
 たとえば、熱プラズマジェットが Kelvin-Helmholtz不安定性によって周囲の低温気体を巻き込み、プラズマ遠方にも多数の渦を誘起しながら、それらの崩壊によって乱流化するということは30年ほど前に米国での実験により示されてました。それにもかかわらず、これまで数値シミュレーションによって再現されたという報告がなかったのは上記の理由によるところですが、この度ようやくブレークスルーに至ったといえます。

協力:東北大学サイバーサイエンスセンター

※ 詳しくはこちら(↓)をご参照ください。
  • Time-Dependent 3-D Simulation of an Argon RF Inductively Coupled Thermal Plasma,
     Plasma Sources Science and Technology, Vol. 21, No. 5, (October, 2012), pp. 055029 (14 pages).
     Masaya Shigeta
  • Three-dimensional flow dynamics of an argon RF plasma with DC jet assistance: a numerical study,
     Journal of Physics D: Applied Physics, Vol. 46, No. 1, (January, 2013) 015401 (12 pages).
     Masaya Shigeta
  • Turbulence modelling of thermal plasma flows,
     Journal of Physics D: Applied Physics, Vol. 49, No. 49, (November, 2016), pp. 493001 (18 pages).
     Masaya Shigeta
  • Numerical Study of Axial Magnetic Effects on a Turbulent Thermal Plasma Jet for Nanopowder Production Using 3D Time-Dependent Simulation,
     Journal of Flow Control, Measurement & Visualization, Vol. 6, (April, 2018), pp. 107-123.
     Masaya Shigeta
  • Modeling and Simulation of a Turbulent-like Thermal Plasma Jet for Nanopowder Production,
     IEEJ Transactions on Electrical and Electronic Engineering, Vol. 14, (January, 2019), pp. 16-28.
     Masaya Shigeta
  • Simulating Turbulent Thermal Plasma Flows for Nanopowder Fabrication,
     Plasma Chemistry and Plasma Processing, Vol. 40, Issue 3, (May, 2020), pp. 775-794.
     Masaya Shigeta

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    溶接における溶融金属流動と熱エネルギー輸送を捉える粒子法シミュレーターの開発



    溶接は、自動車・鉄道(車両もレールも)・船舶・航空機といった輸送機器や、建物・橋・プラント設備といった構造物などの製造に用いられている、名実ともに人類社会を支えている、ものづくりの基幹プロセスです。しかしその一方で、たとえば最もよく使われているアーク溶接は、わずか1立法センチメートルの中に固・液・気・プラズマの4相が相互に影響し合いながら同時に存在するという複雑な系ですので、そこで起きている流体現象や熱エネルギーの輸送メカニズムは今もなお未解明で、主にノウハウで施工されているのが現状です。
     そこで、粒子法という流体シミュレーション手法に溶接プロセス特有の物理モデルを(なければ新たに考案して)組み入れることでコンピュータ内で現象を再現して、実験計測できない情報(溶融金属内部の温度や流速、電磁気力の向きや大きさなど)をCGで可視化することでまずは観て理解し、さらに得られた数値データを解析することで現象解明を図っています。また、実験では不可能な非現実環境(たとえば電流が流れていても電磁気力やジュール発熱が生じないとか)を意図的につくってシミュレーションを行うことで、現象を本質的に決定付けている因子を浮き彫りにすることもできます。現象を複雑に覆っているベールを1枚1枚剥がしていくイメージです。このようなアプローチを「数値実験」と呼んでいます。
     なぜ粒子法を用いるかというと、相変化による移動境界や自由表面の大変形をともなう流体運動への適合性が高いからです。また、計算格子(メッシュ)を用いるシミュレーションよりも、粒子を追いかけるという点で直感的にわかりやすいということが挙げられます。そのため、流体工学を専門としない研究者やエンジニアにとっても、利便性が高く、使いやすいシミュレーターの開発したいという思いで、この研究に取り組んでいます。

    よかったら下記のWebマンガも見てみてください。(閲覧無料
  • 浪速博士の溶接がってん!R「溶接プロセスのシミュレーションの活用法って何?の巻」
     (一社)日本溶接協会,原作:茂田 正哉,作画:たつのからこさん

    実験協力:大阪大学接合科学研究所 田中研究室


    ※ 詳しくはこちら(↓)をご参照ください。
  • 非圧縮性SPH法を用いたTIG溶接における溶融池形成シミュレーション,
     溶接学会論文集, 32巻, 4号, (December, 2014), pp. 213-222.
     伊藤 真澄, 伊澤 精一郎, 福西 祐, 茂田 正哉
  • Numerical Simulation of Joining Process in a TIG Welding System Using Incompressible SPH Method,
     Quarterly Journal of the Japan Welding Society, Vol. 33, No.2, (May, 2015), pp. 32s-38s.
     Masumi Ito, Yu Nishio, Seiichiro Izawa, Yu Fukunishi, and Masaya Shigeta
  • Numerical Simulation of Droplet Transfer with TiO2 Flux Column During Flux Cored Arc Welding by 3D Smoothed Particle Hydrodynamics Method,
     Quarterly Journal of the Japan Welding Society, Vol. 38, No. 2, (May, 2020), pp. 84s-88s.
     Ryo UENO, Hisaya KOMEN, Masaya Shigeta, Manabu TANAKA

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    超高温材料加工プロセスにおける熱流動現象の実験的可視化計測法の研究



    プラズマは肉眼で直視してはならないほど強く発光するため、相互作用している溶融金属はその光に埋もれてしまい観察することはできませんが、発光の物理を理解して適切に対処することで、動画のようにプラズマからの光のみを消して溶融金属の挙動を観ることができます。また、プラズマからの光自体にも特性があり、光学的な変換処理によって温度を求めることができます。たとえばアークプラズマの場合、最高温度が2万度近くに達することもありますが、温度計を挿入して測れるものではありません。そこでプラズマや光の物理についての知識が役に立ちます。
     また、動画右上のようにステンレス上でアークプラズマを発生させると、下向きの高速気流があるにもかかわらず2層の青い発光領域が停滞し続ける(そしてそれが上部のタングステン電極を消耗させる?)理由は長く未解明でした。本実験計測とオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の理論的検討による国際共同研究によって、プラズマ内部をあたかも滝登りのようにイオンが遡上することが主たる原因であることを、最近ようやく解明することができました。
    (※溶接アークプラズマとは異なるいくつかの別タイプのプラズマ生成装置も所有しています。)

    撮影協力:大阪大学接合科学研究所 田中研究室

    ※ 詳しくはこちら(↓)をご参照ください。
  • Investigation of the bilayer region of metal vapor in a helium tungsten inert gas arc plasma on stainless steel by imaging spectroscopy,
     Journal of Physics D: Applied Physics, Vol. 52, No. 35, (August, 2019), pp. 354003 (9 pages).
     Keigo Tanaka, Masaya Shigeta, Manabu Tanaka, Anthony B. Murphy
  • Visualization of electromagnetic-thermal-fluid phenomena in arc welding,
     Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 59, (November, 2019), pp. SA0805 (12 pages).
     Masaya Shigeta, Manabu Tanaka
  • Imaging Spectroscopy for Transient Transport of Chromium Vapor During Helium TIG Welding,
     Quarterly Journal of the Japan Welding Society, Vol. 38, No. 2, (April, 2020), pp. 21s-24s.
     Keigo TANAKA, Masaya Shigeta, Manabu TANAKA, Anthony B. MURPHY
  • Investigation of transient metal vapour transport processes in helium arc welding by imaging spectroscopy,
     Journal of Physics D: Applied Physics, Vol. 53, No. 42, (July, 2020), pp. 425202 (8 pages).
     Keigo Tanaka, Masaya Shigeta, Manabu Tanaka, Anthony B. Murphy

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    プラズマ流動場におけるナノ粒子集団形成現象の数式化と計算アルゴリズムの考案



    プラズマ流を用いることで、ナノメートルサイズの超微粒子を大量創製することができると期待されています。しかし、その超高温の熱流動場やナノ秒~ミリ秒にわたって起こるナノ粒子形成の直接計測は非常に難しいため、その物理現象はほとんどわかっていません。物理現象がわからなければ、用途に合ったナノ粒子を作ることはできません。そこで本研究では、数学と物理学の理論に基づいた方程式系(数理モデル)を組み上げ、さらにそれを解くための数値計算アルゴリズムも考案することで、現象解明に取り組んでいます。

    ナノ粒子は様々な分野での応用が期待されています。
  • 環境分野:自動車の排ガス浄化用触媒、太陽光パネル、燃料電池
  • 医療分野:DNA検知、ドラッグデリバリー、抗アレルギー剤
  • 工学分野:大規模集積回路、耐熱耐酸化電極、次世代高性能磁石

    ナノ粒子を効率的・高精度に大量創製できるようになれば、これらの分野は飛躍的に進歩し、その結果として私達の社会に多大なるイノベーションをもたらしてくれるはずです。
     この研究の最終的な目標は、コンピューター内にバーチャル(仮想的)な実験システムを構築することです。このシステムが完成すれば物理現象を詳細に解析することができるようになるだけでなく、安価で仮想実験を繰り返すことができるようになるため、現在の実験研究が抱えている「高額な設備と運転費用」という大きな問題を打開することができます。そして、よりイノベイティブなナノ粒子創製プロセスの制御方法を見出すことができるようになり、新機能をもったナノ粒子の開発や新たな創製システムの発明へとつながっていくことが期待されます。

    協力:東北大学サイバーサイエンスセンター

    ※ 詳しくはこちら(↓)をご参照ください。
  • Growth model of binary alloy nanopowders for thermal plasma synthesis,
     Journal of Applied Physics, Vol. 108, Issue 4, (August, 2010), pp. 043306 (15 pages).
     Masaya Shigeta and Takayuki Watanabe
  • Simple equations to describe aerosol growth,
     Modelling and Simulation in Materials Science and Engineering, Vol. 20, No. 4, (May, 2012), pp. 045017 (11 pages).
     Valerian A. Nemchinsky and Masaya Shigeta
  • Effect of precursor fraction on silicide nanopowder growth under thermal plasma conditions: a computational study,
     Powder Technology, Vol. 288, (January, 2016), pp. 191-201.
     Masaya Shigeta, Takayuki Watanabe
  • Effect of Saturation Pressure Difference on Metal-Silicide Nanopowder Formation in Thermal Plasma Fabrication,
     Nanomaterials, Vol. 6, (March, 2016), pp. 43 (10 pages).
     Masaya Shigeta, Takayuki Watanabe
  • Numerical Study of Axial Magnetic Effects on a Turbulent Thermal Plasma Jet for Nanopowder Production Using 3D Time-Dependent Simulation,
     Journal of Flow Control, Measurement & Visualization, Vol. 6, (April, 2018), pp. 107-123.
     Masaya Shigeta
  • Modeling and Simulation of a Turbulent-like Thermal Plasma Jet for Nanopowder Production,
     IEEJ Transactions on Electrical and Electronic Engineering, Vol. 14, (January, 2019), pp. 16-28.
     Masaya Shigeta
  • Numerical analysis of correlation between arc plasma fluctuation and nanoparticle growth-transport under atmospheric pressure,
     Nanomaterials, Vol. 9, No. 12, (December, 2019), pp. 1736 (13 pages).
     Masaya Shigeta, Manabu Tanaka, Emanuele Ghedini
  • Simulating Turbulent Thermal Plasma Flows for Nanopowder Fabrication,
     Plasma Chemistry and Plasma Processing, Vol. 40, Issue 3, (May, 2020), pp. 775-794.
     Masaya Shigeta
  • Anisotropic Nd-Fe ultrafine particles with stable and metastable phases prepared by induction thermal plasma,
     Journal of Alloys and Compounds, Vol. 873, No. 25, (August, 2021) pp. 159724 (9 pages).
     Y. Hirayama, M. Shigeta, Z. Liu, N. Yodoshi, A. Hosokawa, K. Takagi
  • Anisotropic Sm-Co nanopowder prepared by induction thermal plasma,
     Journal of Alloys and Compounds, Vol. 882, No. 15, (November, 2021), ppl. 160633 (10 pages).
     Kwangjae Park, Yusuke Hirayama, Masaya Shigeta, Zheng Liu, Makoto Kobashi, Kenta Takagi
  • Spatial composition distribution of a Ni-Cu binary alloy powder in a thermal plasma process,
     Journal of Alloys and Compounds, Vol. 898, (March 25, 2022), pp. 162792 (7 pages).
     Y. Hirayama, M. Shigeta, K. Takagi and K. Ozaki

  • 以下の項目については、茂田の個人Webサイトで解説しています。
  • 直流-高周波誘導ハイブリッド熱プラズマの3次元流動ダイナミクス
  • 熱プラズマ流の数値計算における基本的な問題
  • エアロゾルの成長を簡潔に記述する方程式系の提案
  • 熱プラズマプロセスにおける二元系ナノ粒子群(ナノパウダー)の集団成長過程
  • 対向流により急冷される高周波誘導結合型熱プラズマ流およびナノ粒子群生成
  • ティグ溶接中のアークプラズマ
  • 一様磁場における2つの非中性プラズマリングの運動